派遣社員が規定外の仕事を頼まれる3つのケースと具体的な対策法

派遣社員は短期間で職場がコロコロと変わり、派遣先でその都度新しい仕事を覚えたり、職場環境に慣れたりと、苦労の絶えない仕事です。

派遣社員はあらかじめ、派遣先に出勤する前に業務内容や残業の有無、労働条件などを提示され、それを確認した上での仕事になります。

ところが、実際に派遣先に行ってみると「何だか聞いていた仕事内容と違う…」というケースもちらほら。

この記事では規定外の仕事を派遣先で頼まれた場合の具体的な事例と、その対策法に迫ります。

目次

派遣社員にありがちな、規定外の仕事を頼まれるケース

仕事ですから臨機応変に対応しないといけないこともありますし、その場の状況に応じて普段とは違う仕事を引き受けることも、たまにあります。

しかし普段とは違う仕事がいつのまにかメインの仕事になってたり、何の断りもなく規定外の仕事を頼まれるようになったときは注意が必要です。

なぜならそれは立派な「契約違反」になるから。

ここではまず、そんな規定外の仕事を頼まれるケースについて具体的にほりさげてみたいと思います。

事務作業のはずなのに…正社員と同じ仕事をやってない?

ここでは派遣社員A子さん(31歳・女性)のケースを見てみましょう。

A子さんはもともとは電話応対や書類作成を中心とした事務スタッフとしてある企業に出向いていました。

ところが昔経理の経験があったという事を耳にした派遣先の社員から経理業務をある時頼まれたそうです。

A子さんは派遣先の切迫した状況を不憫に思い、親切心から経理業務を引き受けるようになりました。

この場合A子さんは自らボランティア精神で経理事務を引き受けたので本人としては問題は無くても会社としては問題があります。

契約外の仕事を派遣社員にまかせたという違法性です。

もしA子さんが経理業務を行う上で何か重大なミスをした場合、本来正社員がやる仕事を派遣社員に任せていたということで、責任の所在などの観点からも非常に複雑な話となります。

「これもやっといて」をついつい引き受けていない?

例えばお茶汲みや掃除、郵便物の投函等の雑務は「付帯業務」に当たるため、むしろ積極的に引き受けることが好まれます。

しかし、派遣先の社員から「ついでにこれもお願い」と仕事を任された場合はどうでしょうか。

その場合は、業務内容が自分の担当の範囲かどうかをよく確認する必要があります。

よくあるのが正社員が自分の仕事を派遣社員に押し付けて、自分は楽をしようとするケースです。

これも状況によりけりで、派遣社員があまりにも暇で、正社員が手が回らないほど忙しく、緊急でヘルプが必要な場合は信頼関係により引き受けてもいいかもしれません。

しかし特に忙しそうな様子もないのに仕事を押し付けられた場合は、正社員が派遣社員を道具として使っている証拠です。

そういった場合には仕事を断ることを考えなくてはいけません。

契約違反?派遣社員なのに残業させられていない?

派遣社員の悩みとして多いのが「残業」の問題。

子育てや家事と両立がしたいから、残業しなくて済むようにあえて派遣社員になったという方も多いですよね。

それなのに残業が多ければ不満がたまるのも無理はありません。

まず残業については、派遣先に出向く前に派遣会社から提示される労働条件をもう一度確認してみましょう。

「残業はありません」という条件だったのにいつも残業させられている、のであればこれは契約違反です。

また「残業あり」の仕事だった場合でもどれくらい自分が残業しているのかを確認しましょう。

派遣会社と派遣社員との間では労働基準法第36条の「時間外・休日労働に関する協定(通称36協定)」が結ばれていますから、残業ありの案件の場合、「1日◯時間、1ヶ月◯時間、1年◯時間まで」という規定があるはずです。

自分の残業時間がそれに従っているのかどうかを確認しましょう。

権利をきちんと主張!規定外の仕事の断り方

このように派遣社員としての仕事内容に疑問を少しでも感じたら行動に移すことが必要です。

規定外の仕事だった場合は、それを引き受けることで派遣先の会社側にもデメリットとなってしまいます。

先ほどのお茶くみや郵便物の仕分け、といったようなちょっとした雑用=付帯業務をどこまでと捉えるのかという問題もあります。

そもそも派遣社員は不安定な身分と給与で、正社員とは全く違う条件で働いているのですから、正社員と同じような働きをする必要はないのです。

断固とした姿勢で規定外の仕事を断る勇気も必要です。

契約外の仕事を頼まれたらどうやって断るべき?

契約外の仕事を頼まれたかも、と感じたらどうするべきでしょうか。

先ほども言ったような「付帯業務」を明らかに超えている場合は当然断る権利があります。

まずは最初に派遣が決まった時の労働条件をもう一度確認してみましょう。

そして明らかに規定違反の場合はその旨を派遣先の社員に伝えて断ります。

しかし中には、規定違反の仕事を頼まれているのかどうか、判断に迷う時がたくさんありますよね。

そんな時は、自分の指示命令担当者に相談して自分がやるべき仕事なのかを確認すると一番正確です。

もし指示命令担当者が契約外だと判断した場合は速やかにそのことを派遣会社の担当者に報告し、状況の改善を派遣先に指示してもらいましょう。

とはいうものの、毎回そのようなことを行うのは不可能に近いですから、その場で臨機応変にやんわりと断ることも必要です。

空気を読みながら、残業をやんわり断れる?

契約外の仕事で多いのが、残業を頼まれるケース。

ただ「できません」と突き放すのではなく、職場の雰囲気や今後の自分の働きやすさに影響を与えないためにも断り方には注意です。

まずはこちらも、派遣前に提示された条件をよく確認するようにしましょう。

そこに「残業なし」と書いてあった場合は、残業をする義務が当然ないのでそれを理由に断ることができます。

もし「残業あり」と書いてあった場合には残業を引き受けなければなりませんが、契約に1日〇時間まで、などの上限時間が書いてある場合はそれを超える残業は断っても大丈夫です。

具体的な残業時間の記載がない場合は、派遣社員だからできない、という断り方が難しいため、体調不良や子供を迎えにいかねばならない、などの理由を使ってやんわり断るといいでしょう。

それでも規定外の仕事を頼まれた時の究極の対策法

規定外の仕事をちゃんと断っているのに、あまり状況が改善せず、規定外の仕事を引き続き頼まれるというのはよくある話です。

これは派遣先の会社の雰囲気や、社員たちが派遣社員をどう見ているのかが大きく影響してきます。

例えば管理職や上司の派遣社員への理解があっても、現場の社員がそれを無視して派遣社員へ規定外の仕事を与え続ける、といった状況です。

こういった現状を打破するにはしっかりとした行動・対策をしていくことが大切です。

派遣先にきちんと訴えるために!派遣会社には相談した?

派遣先の会社の雰囲気が、派遣社員に対して理解がない場合は派遣会社に動いてもらうのが一番です。

まずは規定外の仕事を押し付けられる状態が続いていることを派遣会社の担当者に相談しましょう。

そこで、契約時の条件などを担当者と一緒に確認し、現在派遣先で規定外の仕事を引き受けさせられているという事実を確認しましょう。

その上で、派遣会社の担当者から、規定外の仕事の依頼を辞めるように派遣先の会社に訴えてもらいます。

派遣社員を雇う会社というのはどこも人手不足で、派遣会社との提携が切れてしまうのが一番のマイナス。

そのため、派遣会社とはなるべくトラブルを起こしたくない、という考えが根底にありますから、派遣会社から強い訴えがあった場合は動きを見せることが期待できます。

派遣社員の強い味方!専用相談窓口には連絡した?

さて、派遣会社の担当者から訴えてもらったのに、それでもまだ現状が変わらない、というあなたへ。

そうなってくるといよいよ最終手段に出ないといけません。

それは派遣先でも派遣会社でもなく、第三者の外部機関に連絡をするということ。

例えば一般社団法人・日本人材派遣協会では相談センターを設置し、土日祝日以外は電話相談を受け付けています。

こういった機関に相談をし、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

例えば残業代が出ていないのに、残業を強要されている場合は、労働者として残業代を請求することができますから、そのための法的な正しい手続きなどを教えてくれるかもしれません。

短い契約であれば更新を見送ればいいのですが、長期を前提とした派遣先で働いている場合は、長い目で見た対策が必要です。

まとめ

派遣社員がするべき仕事の範囲、その境界線はあいまいなことが多く、どこまで引き受けていいのかが微妙なところが実際の現場です。

「契約外だ」と言って必要最低限のこと以外を一切やらないと、派遣先からの印象や評価も悪くなりますし、少しくらいの付帯業務であれば引き受けることも時に大切です。

しかし、親切心から何でも、はいはいと引き受けていると「仕事を頼みやすい人」というふうに会社から見られ、規定外の仕事をどんどん頼まれる原因にもなってしまいます。

規定外の仕事を頼まれていると実感したら、まずは自分で判断しないで派遣会社に相談し、契約条件などをしっかり再確認した上で対策をとっていきましょう。

あまりにも状況の改善が難しい場合は短期契約なら更新を見送り、長期であれば第三者機関の相談窓口などでアドバイスを受けましょう。

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